ちょうちん職人になって40年。幅商店の創業者である父の後を継ぎ、技術を習得してきた幅英樹は、現在も先代からの製法を守り抜き提灯づくりを行っている。
ちょうちんに使うのは、地域の誇る伝統「美濃和紙」だ。美濃和紙は薄手で均等に漉かれているという特徴があり、光の透過率が良く障子紙やちょうちん紙に適している。この地域の伝統を活かしたものづくりは先代から今に至るまでずっと続いている。現在は、特別に幅商店のちょうちん専用の紙を和紙職人に漉いてもらうというこだわりようだ。あくまでも、地域のための、地域における手仕事を継承していくというスタンスを貫いているのだ。
英樹が特に力を入れてきたのはちょうちんの手描き文字だ。ちょうちんを見てまず目につくのが和紙の上で生き生きと力強く現れる文字や模様だ。幅商店では、文字や模様もすべて一つ一つ手で描いている。祭礼用などのサイズの大きなちょうちん文字の技術を持つのは幅商店では英樹のみ。それも、100%満足できる文字が描けるようになったのもここ10年ほどのことだと明かす。コンピューターで簡単に美しい文字がつくれてしまうこの時代だからこそ、人が思いをこめて手で描いたものを大切にしたいという信念を持ち続けている。
ちょうちんは竹ひごと和紙でできている。それは障子と同じように張り替えることができる。地域の神社や家庭で代々つかわれているものの修繕を受けることもたびたびあるのだ。自分がつくったちょうちんは、それが何年も前のものであっても一目で分かる。その張り替えを依頼されるということは、大事に使い続けてもらえているということ。骨組みをつくるところから、紙張り、文字を描くところまで、一貫生産しているからこそ、直すこともできる。大量生産の工場ではなかなかできない、きめ細やかな手仕事で対応していきたい。そんな気概で、英樹はこれまで通りのものづくりを懇々と続けていくのである。